





2024年 10分30秒 シングルチャンネルビデオ 中国に住む祖父の死という出来事と、彼と一度も言語的なコミニュケーションをとる事が叶わなかった日本に住む作者自身の精神世界を起点としたドキュメンタリー作品。私は日本語しか、話すことが出来ないし聞いて理解する事もできない。一方で、私の家族は中国語しか話すことが出来ないし、日本語を聞いても理解出来ない。毎年、母の帰省に付き合っていため、祖父とは何度も会ったことがあった。会話をしたことがなかったが、あたたかい眼差しと握る手、その声が大好きだった。危篤だと聞いてからは、単語帳を書き写したノートを読み上げながら彼への手紙を中国語で書いていた。単語帳に載っている単語は、未知である言葉のはずが、頭の中でネイティブの発音で再生され、懐かしさが込み上げた。その単語も、再生される音声も、持ち主は家族と祖父の声だった。中国語は初学習であるはずが、その単語は聞いたことがあるものばかりだった。単語は家族と過ごした記憶だった。ノートはアルバムになった。次第に、彼への手紙と単語帳の内容が交差してしまった。