2020年 10分30秒 
 マルチチャンネルビデオ現代における人間が獲得した無意識のうちに起こる、戦略的かつ暴力的まなざしを再提示する試みで制作した。複数の画面に、同時に特定の自然の景色あるいは自然物が無音で映り、また同時に別の自然物へと全画面が切り替わっていく。鍾乳洞から、山。山から、川のせせらぎへと、しかし、突如その静寂が破られて、一つの画面に一人ずつ異なる人間の顔が映し出され、語り出す。それぞれの人物が異なる言語を発しているようだが、音声は混じり合いひとつのノイズとなって空間に響く。鑑賞者は、画面に映し出された人物の外見的特徴と何語をどのような声で発しているのかを瞬時に当て嵌め、無意識のうちにラベリングしていく。自分の耳で聞き慣れた音声ほどよく聞こえ、それ以外の言語の音声は単なるノイズとして機能し、また、未知の言語の音声の場合そのセリフの内容が分からず困惑する。一方で、自然物を見ている時の私たちはそれが特定の場所であることや、種類であることを躍起になって詮索したりカテゴライズしない。私たちは人間であるから、人間を見た時、ついそれが何ものであるか属性付けたくなってしまうのだ。

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